秋も深まり、冬の訪れを感じる季節です。秋はセンチメンタルになりますね。ちょっとしたことが原因で感傷的になることは誰にでもよくあること。でも、それが自分でコントロールできないほどつらく、何も出来なくなってしまうと病的異常といえます。今回は「うつ」の話です。
肉親や友人の死、大切なものを失う、などの困難に遭えば、誰もが深く沈み込むものです。この病態を「反応性うつ」と呼んでいます。当然で了解可能な心の反応ですから、この段階では病気ではありません。「うつ」と「うつ病」は違います。「うつ」がひどくなり、治療が必要になった状態が「うつ病」です。大抵は時間がかかっても立ち直れるものですが、うまくいかなければ病気として治療が必要になります。よいことが起こっても落ち込むことがあります。昇進、結婚、出産、目指していた記録達成後などは、逆に不安が襲ってくる場合もあるのです。「荷下ろしうつ」などと呼びます。転居、転勤、転校などの環境変化で起こる「引っ越しうつ」もあります。「五月病」もうつに含まれる概念です。いろいろなストレスが契機となり発症するようで、真面目で責任感の強い人がなりやすいようです。「うつ」になるひとはみんな良い人なのです。
「内因性うつ病」と呼び、ひと昔前まで原因不明でひとりでに発症すると考えられていた概念があります。これは現在では脳内の神経伝達物質であるセロトニンなどの減少が原因とされています。うつは、根性が足りない、怠けぐせがついた、などと非難されるものではなく、脳の器質的異常が関与した病態なのです。意志や精神力では治せません。きちんと診断して正しい治療を行うことでこそ、改善が期待できるのです。
うつの症状は、「憂うつ気分」「おっくうさ」「不安」に集約されます。これらが数週から月単位で続きます。何もする気になれない、集中できない、眠れない、なども多い症状です。不眠で寝酒が増えるのもうつの初期症状かも知れません。「仮面うつ病」のように、だるさや痛みなどの身体症状が前面に出て、すぐにはうつと思いつかない病態もあります。
うつを放置すれば、ひきこもりや自殺といった事態も懸念されます。まずは、診断をはっきりさせること。そして休養を取り、治療すること。うつに「励まし」は禁物といいますが、「治療すれば改善すると言い聞かせること」だけは例外的に大切です。うつを疑ったら、まずかかりつけの医師に相談してください。そして、専門家である精神科医の診察を受けてください。「うつ」も「精神科」も偏見の目で見ない周囲の理解が必要です。5人に1人はうつになる時代です。後回しにしなければ、直って復帰できるのです。面倒くさいと何でも後回しにしているあなた、うつの初期症状のせいかも知れません・・・・・よ?
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