3月になると春はもうすぐですね。木々は芽吹き、虫は這い出し、桜の開花が待たれる季節。その一方で3月は、職場を離れる人や卒業する人を送別する季節でもあります。
卒
業式といえば、学生服のボタンをやり取りする恒例行事がありますね。女子生徒が好きな男子生徒に第2ボタンを欲しいと伝えて恋を告白し、それを渡せばOK
のサイン。では、どうして第2ボタンなのでしょう?「一番良く触るボタンだから」という説や「一番上のボタンがその人で2番目のボタンつまりその人の2番
目になりたい」という説がありますが、一番本当らしいのは「心臓(ハート)に最も近いから」という説。第2ボタンを外せば相手のハートをつかみやすい、と
いう解釈もいい感じです。ハートがドキドキする青春の一ページですね。
さて「心臓がドキドキする」と聞いたからには、職業柄、血圧の話をしないわけにはまいりません。今回は高血圧の話を少々。
ちょうどいい血圧は年齢に90を加えた値、つまり90歳なら180まで大丈夫、などと少し前まで信じられていました。でも、今はこれ通用しません。健康に留意している皆さんなら180が高過ぎると
わかりますね。では、ちょうど良い血圧とはどの位でしょうか?
2009年度の高血圧治療ガイドライン(治療指針:いわゆる教科書です)が、この2月に改訂されました。これによると「家庭血圧」の目標値は高齢者では
「上が135、下が85未満」、若年者、中年者では「上が125、下が80未満」です。血圧は上も下も両方とも下げた方が良いのです。今まで血圧は高齢ほ
ど高くなっても仕方がないとされていましたが、今回の改訂で、老いも若きも135/85以上は高血圧ということになりました。
病院やクリニックで計るといつもより血圧が高くなる人がいますね。白衣現象または白衣高血圧などといいますが、心配してドキドキすると、少し血圧は上昇す
るのです。診察室での血圧は5〜20くらい上昇することがありますので、私は家庭での血圧を重視しています。最近の血圧計は優秀で計り方が正しければ正確
な血圧を測定できます。ぜひ一台は購入して、時々計ってみてください。出来れば、手首で計るものよりも上腕で計るタイプがお勧めです。値段は三千円くらい
のものから、いろいろありますが、大きな電気店やホームセンターなどで実際に計ってみて選ぶと良いでしょう。三〜五千円程度の売れ筋のものが求めやすいの
でお勧めです。そして、家庭血圧が150以上あるようなら治療を検討した方が良さそうですので、一度外来でご相談ください。計る時間はいつでも良いのです
が、朝起きて30分くらいして計る早朝血圧が高いと早朝高血圧といって、やや動脈硬化が進みやすいといわれています。一日中良好な血圧でいることが理想で
すので、朝だけでなく、いろいろな時間に計測してみて実験してみるのも良いですね。なお、一回目の計測値が重要です。何度も計ると下がるため、良い血圧が
出るまで計って安心する人がいますが、最初の血圧が高いのであれば、やはりその値を重視して、それを下げる努力をすべきなのです。ぜひ、家庭血圧を測って
ノートに記載してお持ちください。外来でお待ちしています。血圧計を外来にお持ちいただければ詳しい計り方や精度チェックなどもいたしますので、いつでも
どうぞ。
高血圧を放置すると動脈が硬く狭くなり心臓病や脳卒中を起こしやすくなるので治療が必要なのです。そのためには「塩分制限」を守り「適度な運動」をして「肥満を予防し適正体重に近づける」のが重要で、「薬」は最後の手段です。
ときめいてドキドキするのは素敵なことですが、高血圧のせいで動悸がするのは困りもの。皆さんくれぐれも心臓をお大事に。
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