〜4月のおたより〜
八千代市胃がん検診について

 皆さん、お久しぶりです。
 この季節のおたよりも半年ぶりですね。年末のインフルエンザ騒動などで、新規開業の当クリニックとしては、いろいろな難問にぶつかったり反省したりで、てんてこ舞いでした。でも、お陰様で、少しずつ来院される患者様の数も増えてきて、ちょっとうれしい春を迎えつつあります。春とは名のみで、4月中旬に雪が降る異常気象ですが、皆さん風邪に注意して、元気に過ごしましょう。

 この四月から、八千代市医師会の理事を命ぜられ、また少し、忙しくなりそうです。医師会の先生方のみならず、市民の皆様のお役に立てますように、精進して参りたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 さて、今月のおたよりは、「八千代市胃がん検診のお話」をしたいと思います。

 私は総合医を目指して医師になりましたが、サブスペシャリティとしては消化器内科を得意としています。特に内視鏡には力を入れています。経鼻内視鏡の良い点を啓蒙して、一人でも多くの皆様に検査を受けていただきたいと思っています。
 上部内視鏡(胃カメラ)は、胃透視(バリウム検査)に比べて、初期の病変の検出率に優れることが明らかになっています。簡単に言えば、胃がんの早期発見率が高いのです。さらに胃カメラでは、生検(組織をつまんで顕微鏡で悪性かどうか調べる検査)が出来るので、バリウム検査よりも精密な検査といえます。

 私は、バリウム検査に比べて胃カメラは精密な検査が出来るので、胃がん検診の際に胃カメラを行う方が良いと思っていました。しかし、八千代市の胃がん検診ではルールが決まっていて、原則的にバリウム検査を行わなければならない、と教えられました。四つの条件(@バリウム・アレルギーがあるAバリウムで便秘するB視力や聴力障害があるC腰痛などで動きづらい)がある場合のみ、例外的に、胃カメラを行っても良いそうです。このルールを厳格に守らないと、八千代市の胃がん検診の担当医療機関から外れることになりかねないので、今年からはバリウム検査を優先しなければならないようです。

 なぜ精密検査が可能な胃カメラを優先しないのでしょうか?理由は四つあります。一つ目は費用の問題。市が検診費用を補助しています。胃カメラよりもバリウム検査の方が検査の費用が安くてすみます。胃カメラ検査前に感染症の採血検査をする施設も多く、この費用も余分にかかるわけです。当院では感染症検査は施行しておりません。二つ目は検査時間の問題。胃カメラは麻酔や前処置などに時間がかかり、1回の検査に30分位かかりますが、バリウム検査は15分位です。バリウム検査は一度に多くの人数を検査するのに優れています。三つ目は胃がんで死亡する確率は変わらないという事実です。胃カメラの方が早期胃がんの発見率に優れますが、バリウム検査で見つかった胃がんも、手術で良くなることが多いのです。わが国の胃がん手術は優秀で、早期で見つからなくても死亡する確率は低いということです。ただし、早期で発見すれば、内視鏡や腹腔鏡で手術が出来るので、合併症も少なく術後の回復も早いのですが。四つ目は胃カメラの方が検査時の合併症が起こりやすいことです。のどの麻酔や肩の注射でアレルギー反応が出たり、眠くなる麻酔注射で血圧が下がったりすることがあります。内視鏡自体によって、のどや胃の粘膜が傷つくこともあります。当院では、肩の注射も麻酔注射もしないのでアレルギーは少ないですが、鼻血が出ることはまれにあります。確かに胃カメラの方が注意すべき点は多いと思いますが、バリウム検査も台から落ちる危険などもあり、どちらも注意は必要です。

 胃がん検診は、旧来の方法から変革しつつある過度期を迎えています。やがては内視鏡で行うのが当たり前になっていくものと思われます。しかし、ルールを変えていくのには時間がかかります。まずは、希望する方全員が、内視鏡による胃がん検診を受けていただけるように変わっていくことを願っています。そして、一人でも多くの方が、早期でのがん発見により、侵襲の少ない治療で治ることを願います。そのために、少しずつ変革の努力をしていきたいと思います。

 最後になりますが、上記をご理解いただき、今年からの胃がん検診におきましては、原則的にバリウム検査を受けていただきたいと思います。もしも異常所見がありましたら、あらためて、胃カメラによる精密検査を施行いたします。皆様方のご理解とご協力をお願い申し上げます。