暑い毎日が続いています。ウランバートルも30度近く乾燥した毎日ですが、草原は青さを増し、花も咲き始め、牧畜も少し元気を取り戻しつつあるこの頃です。7月16日には、当地でも皆既月食が観測できました。ウランバートルはスモッグと雲が多く普段から星が見えない場所ですが、この日はよく見えました。南のゴビ地方に行くと、降るような星空と言いますが未経験です。とにかく、世紀の天体ショーをモンゴルで体験できたのは良かったと思います。さて、今回はモンゴルの一般的な情報について書こうと思います。例によりまして長文ですのでご注意下さい。
面積は156.7平方メートルで、日本の約4倍。人工は98年末統計で242万人、うち首都ウランバートルに77.8万人(2000年4月現在)。第2の都市はダルハンで約9.4万人、第3の都市はエルデネット、約7.5万人。全国に21の県と政令市ウランバートルを含め22の地方自治体を有しています。92年2月に民主化、モンゴル人民共和国からモンゴル国と改称されました。
言語はモンゴル語ですが、ロシア教育の賜物にてほとんどの人はロシア語可です。日本語や英語を解する人も増えており、言語学的に優秀な国民とつくづく思います。私などは7年以上英語教育を受けているのに1年間学んだだけのモンゴル人の英語に負けそうです.............やる気の問題でしょうか?
高地に位置し、全国平均海抜は1580m、ウランバートルは1351mです。最初赴任したときは階段を上るだけでハアハアしましたが、慣れました。今すぐ日本で競技すれば新記録が出るかも(何の試合で?)。
ウランバートルは典型的な内陸性気候で、年間平均気温はマイナス3度。最高40度、最低マイナス40度と厳しい気候です。世界で冬最も寒い首都と言われています。降水量は少なく東京の6分の1程度です。四季はありますが、梅雨はありません。
歴史や政治は割愛します(ご興味のある方は直メール下さい)が、日本と大きく違うのは、大統領制、議会1院制、徴兵制ですね。兵役期間は男子18歳〜28歳の間に1年間です。内緒ですが、お金持ちは兵役を免れることが出来るらしいです。海がないので、陸軍・空軍の2軍制だとか。
産業は、メインはやはり農牧業で、家畜頭数は3300万頭余り。民主化で増えましたが、昨冬のゾド(寒害)で200万頭以上を失った由です。今年こそ夏の内に干し草を備蓄しておくべきなのに、牧草の生育が良くないようで、また冬が心配です。
5畜といって、羊・牛・山羊・馬・ラクダが主です。モンゴルのラクダは二コブラクダで世界でも珍しいそうです。コブの間に座ってゴビ砂漠を行くのもオツなものだとか。乳製品、毛製品(カシミア、キャメル、ウール)、皮製品、食肉、さらには観光客商売と産業の中心を占めています。
農作物も最近は増えてきました。ジャガイモは美味しいです。北海道といろいろな相似点があるようです。地下資源も有望で、金、銅、タングステン、石炭、石油など開発と精製が進めば輸出も可能でしょうが、日本などの技術協力が不可欠のようです。
労働・学校共に完全週休2日制で、どのカレンダーを見ても土日とも赤色表示です。大使館もご多分に漏れず。研修日はありません (当たり前か) が、完全週休2日制で当直なしって実に良いですね。病みつきになりそうです。日本のドクターの皆さん、すいません。でもごくたまにですが夜起こされることはあります。一応、ちゃんと働いていますので。ついでですがモンゴルの休日は、2月6・7日の旧正月、6月1日母子の日、7月11〜13日国家記念日(ナーダム)、11月26日共和国の日、以上合計7日です。大使館ではこれに加えて日本の休日、正月・春分の日・憲法記念日・子供の日・体育の日・文化の日・天皇誕生日がお休みです。各国大使館でも、任国の休日数と合わせて調整するようです。そのため当地では9月は休日なしですね。
教育は、7歳から8〜10年間の義務教育(9・10学年は高等学校に相当し、進級試験合格が条件)と、大学および専門学校。識字率は96.9%、義務教育就学率は約87%、9学年進級率は71.8%。9月学期開始で翌年6月終業です。識字率の高さに驚きますが、ロシア教育の賜物だとか。最近は低下しつつあるようです。ロシア式教育とチベット仏教の布教はモンゴルを支配しやすくするロシアの作戦に思えるのですが、どうでしょう?
国民こぞってのイベントとしては、7月11〜13日のナーダムと、2月6・7日のツァガーン・サル(旧正月)があります。ナーダムは経験しましたので、少し解説しましょう。
ナーダムの原義は「遊戯」で、ブフ(モンゴル相撲)・弓射・競馬の3種競技の総称です。元々は軍事鍛錬的な意味合いで始まり、17世紀頃から国家的行事として定着。3競技が同時に3会場で開催され、観客も移動で大変ですが、すごい盛り上がりです。
ブフは、広い競技場で同時に何組もが試合をします。土俵はなく、手を除く膝から上が土に突くまであちこちで延々と行われます。廻しがないので、手や足や腰を持って投げるように地面に叩きつけます。決着が付くまで数時間続くこともあり、けっこう退屈に見えますが、モンゴル人の最も好きな競技です。国民的スポーツで、日本でいうプロ野球のような人気でしょうか。日本の相撲とは本質的に異なる競技で、レスリングに近いかも。実際、TIMEにはwrestlingと紹介されていました。旭鷲山関が足を取ることが多いというのも頷けますね。ちなみに彼はモンゴルでも大変人気がありますが、少年の内に日本に渡ったのでブフとしての経歴上は目立ったものが残っていないそうです。勝ち抜き戦で、9回勝ち抜いて優勝が決まります。有名な大横綱バットエルデネが今回は後進に勝ちを譲り、若いスフバトが優勝しました。大横綱になると国民的英雄で尊敬されますが、基本的にはアマチュアなのでみんな他に仕事を持っています。バットエルデネさんも、有名な実業家ですね。彼の人気は絶大で、大統領選に出れば当選間違いなしと言われています。
競馬は、10〜30kmの距離を馬齢毎に「直線」コースで競います。(このコースは基本的にナーダム専用です!飛行場から市内に向かって右側に拡がる広大な土地で、有効利用できないものか余計なことですが気になります)騎手は体重の軽い少年少女で、総参加数は500頭近い数でした。参加しゴールできることが栄誉であり、それこそ遠くの県から続々とナーダムに合わせてゲルで移動してきます。参加の数週間前から、走る馬は食事を控えて痩せさせ体重を抑えて試合に懸けるんだそうです。すごい気合いの入れ方ですね。ナーダム前日の10日夕方、スタート地点に行きましたが、それこそ見渡す限り馬、馬、馬で壮観でした。この景色はなかなか経験できないでしょうね。実際の試合は、人だかりの中、砂煙を上げて疾走してくる馬群に感動ものです。誰が勝ったかちっとも判りませんが、走ってくる馬が観られるだけで満足できました。
弓射は男子75m、女子60mの的を狙います。和弓と違い、素手で引き地面においたフエルト製の的に当てますが、矢が地面を這っても当たれば良いようです。4射で個人戦と団体戦が行われます。私は弓道部でしたので、大変面白かったのですが、他の2競技に比べて地味な弓射は観客も少な目で、首相や国会議長が引いたりして、イベント的に盛り上げようとしているのがよく判りました。左利きの人が後ろ向きで引いているのには、ゴルフの練習場みたいでビックリしました。同じ弓ながら、文化の違いを感じましたね。昨年は日本の流鏑馬が披露され、日モ文化交流に一役かった由でした。
というように、ナーダムはモンゴルで最も有名な祭典なのですが、面白いのは観光客に迎合しない態度です。最も観光収入が見込める3日間だと思いませんか?それなのに、日本語のパンフレットも、説明も、看板も全くなし。伝統を守るためだそうですが、頑固な国民性で潔いですね。恐らく、一般観光客の大半は訳わからずほとんど何も見ないで帰っていくのではないでしょうか?政府は日本人観光客目当ての改革を望んでいるようですが、国民が許さないようです。そんなことを、屋台のホーショル(肉饅頭をつぶして油で揚げたもの、1枚100Tg)にかぶりつきながら思った次第です。
では、また。
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